増田淳が昭和初期に設計した鋼橋のうち現存する7橋を選定して図面、計算書の分析を行なった。この分析をもって、図面、計算書が、当時の橋梁建設技術を示す史料性をもつものを示すことを目的とした。分析には、7橋すべての現橋の調査結果も踏まえ、同時代の欧米橋梁図面などの対比を含めて実施した。 この結果、昭和初期に増田淳事務所で実践された設計方法について、優れた図面作成手法が採用されていること、橋梁設計者、製図者の橋梁工事における所掌範囲が現在よりも広いこと、図面の表記方、図法が、同時代のアメリカ方式の影響を強くいることなどが明らかとなった。 同時に、図面の構成などからアメリカとは異なる詳細設計志向の国内の設計図面の方向性も明らかとなった。これをもって過去の図面、設計計算書は同時代の技術の成立過程を示す史料性を有することを明らかとした。 一方、このように史料価値を有する文書である過去に建設された橋梁な中心とする土木構造物の図面、設計計算書等が、どのように保管されているかについて、イギリス、アメリカの海外関連機関を含を国内の公文書館、図書館などついて、アンケートおよび実地調査を実施した。この結果、土木図面の保管状況はイギリス、アメリカの図書館、関連学会での取り組みに比べて、国内の公文書館、図書館では極めて限定的で、通常は保管対象とはなっていない実態があることが分かった。国内では建築分野では、図面収集の取り組みがされているが、土木分野でも土木遺産の今後造花傾向にあることを鑑み、保管に向けてなんらかの対応策をとる必要性が明らかとなった。 以上、昭和初期から前期に作成された増田淳の図面を対象として、図面の史料性を明らかにするととともに、橋梁を含む土木図面の保管の実態を海外との比較の視点から明らかとした。
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