研究概要 |
進展亀裂先端近傍での応力分布と亀裂の進展経路及びその分岐点を調べる目的で2種類の動的光弾性試験と数値解析を行った.以下に研究内容と成果の概要を示す. 最初の実験では,エポキシ樹脂を用いて初期亀裂を含む矩形供試体を作成し,3点曲げ試験により初期亀裂から亀裂を進展させた.亀裂進展過程を毎秒100万枚撮影可能な超高速ビデオカメラで撮影することにより,進展亀裂の先端位置と亀裂先端近傍での干渉縞の変化を1μ秒毎の実画像により計測することを試みた.この実験では,亀裂先端部近傍で供試体が面外変形し,その結果亀裂先端部近傍にブラソクスポットが生じて先端部近傍の観察を妨げる.これを防ぐ目的で,液体パラフィンとα-プロムナフタレンを用いてエポキシ樹脂と同じ屈折率を持つ液体を作成,液体中で破壊試験を行う浸潤試験を実施した.その結果,亀裂先端部近傍の鮮明な画像を記録することに成功した. 次に,矩形供試体の向かい合った2つの長辺に,3mm,5mm,10mmの食い違いを持たせた2本の対向亀裂を作りこみ,引張試験により亀裂を進展させた.亀裂の進展過程を超高速ビデオカメラにより記録することにより,進展亀裂先端での応力場,進展経路,亀裂分岐点を計測した.これにより,亀裂の進展経路の統計的分布を明らかにした. 最後に対向亀裂の進展を,X-FEMを用いてQuasi-Static解析した.亀裂は先端部要素の最大引張主応力に直行する方向に進展するものとし,要素内を直線的に横断するのとして解析をおこなった.解析の精度は上の実験で記録された亀裂の進展経路の再現性と亀裂先端部近傍の応力場の比較の双方により検証した.その結果,進展亀裂先端部近傍の応力場が,Quasi-Staticな解析で十分に追跡可能であることを示した.
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