研究概要 |
き裂の進展挙動を解明する目的で,本年度遂行した研究は以下の通りである: (1)X-FENを動的な問題に拡張し,メッシュを移動や再定義することなしにき裂の不安定成長を数値解析できるアルゴリズムを提案した.提案された手法は準静的な載荷下でのき裂の不安定成長実験の解析に適用され,解析結果は昨年度に画像計測された実験結果と比較検討された.実験では,動的光弾性試験装置を用いて可視化された主応力差の干渉縞分布とき裂の進展状況が毎秒100万枚の撮影速度をもつ超高速ビデオカメラを用いてIマイクロ秒間隔で画像計測されている.実験結果と解析結果の比較は良好な一致を示し,提案された解析手法が十分な精度をもつこことが示された. (2)解析を用いて,不安定成長するき裂先端部周りの動的J積分が検討された.得られた動的J積分値と動積分値を構成する静的J積分値項,運動エネルギー項,加速度・速度の貢献項の検討から,き裂の不安定成長する際のエネルギー収支についての検討が加えられた.その結果,き裂進展開始時にき裂先端部から供試体全体に向けて大きなエネルギー流出が生じていることが示された.エネルギー流出の終了後には供試体からき裂先端部に向けて一様なエネルギーの流入が続き,き裂が定常的に進展することが示された. (3)動的J積分値を用いてき裂進展量を決定する手法が提案された。提案された手法は(1)に示した拡張X-FEM法を組み合わされ,き裂の進展解析に適用された.解析結果は実験結果と比較され,き裂進展開始直後を除いて十分な精度をもつことが示された.
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