研究概要 |
本研究は地盤・構造連成系解析システムを構築することを目的とし,送電線鉄塔-基礎-地盤連成系の強風による引揚げ問題を適用例として取り上げ,性能規定型設計における解析支援ツールとして提案するものである.研究の最終年度にあたり,本年度に取り組んだ研究項目は大きく分けて以下の2項目である. はじめに,送電鉄塔について地盤-基礎-鉄塔の連成挙動を考慮した強度・安定性評価を行った.実際の設置・使用条件に即した評価を行うため,様々な地形や荷重方向に対する基礎の支持力や近接設置の影響を検討した.次に,地盤-基礎-鉄塔の相互作用を考慮した全体系解析を行った.電線張力や風荷重を想定した各種外力モードについて解析を行い,鉄塔部材を介して基礎に作用する荷重モードを調べた.さらに,全体系解析と脚部を固定した鉄塔単体解析との比較を行い,基礎の変位が鉄塔の崩壊挙動に与える影響を調べた.その結果,全体系の破壊においてクリティカルとなる構成要素が外力モードによって変化することが明らかとなった. 次に,架渉線の正確な挙動把握と構造系全体の連成挙動の解明に資することを目的として,風荷重下での鉄塔単体および架渉線-鉄塔の連成系での三次元有限要素解析を行った.鉄塔単体の解析では風圧荷重による倒壊シミュレーションを数種の風向パターン別に行い,送電鉄塔が力学的応答挙動が荷重モードに左右され易い構造物であることを確認した.また架渉線-鉄塔の連成系の解析では,鉄塔系の風速変動を考慮した風応答シミュレーション及び着氷時を想定したギャロッピングシミュレーションを行い,風速変動および架渉線の振動現象が鉄塔・基礎に及ぼす力学的影響を調べた.これらの解析結果を基に,連成系における風荷重伝達のメカニズムを明らかにするとともに,風を受ける架渉線の動的挙動による鉄塔および基礎への作用についての評価を行った.
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