研究概要 |
酸性硫酸塩土とは,黄鉄鉱(FeS_2)を有する地盤が大気に曝された後,黄鉄鉱と水・酸素の化学反応によって硫酸(H_2SO_4)が生成された土のことをいう.建設工事において排出された酸性硫酸塩土(ずり)をそのまま放置した状態で降雨などが浸透すると,浸透した水は多くの硫酸イオン(SO_4^<2->)を含有して強酸性水となり,それが周辺地域に広がってコンクリート基礎を劣化させたり,地盤中の有害金属を溶出させたりと,様々な地盤工学的問題を引き起こす.石川県内には酸性硫酸塩土が広く分布しており,今後土木工事において多くの排出が予想されることから,早急に適正な処理法を検討しなければならない. 今年度(最終年度)は,土質試験の一斉試験などで用いられる深草土を処理対象土として,消石灰を異なる混合率で混ぜ合わせ,一連の室内試験を各養生日数で実施した.これらの実験結果から,前年度までに実施した酸性硫酸塩土の実験結果と今回の深草土の実験結果を比較し,その差異を明らかにした上で,石灰混合による酸性硫酸塩土の安定処理効果について詳細に検討した.以下に,今年度の研究で得られた知見を述べる. (1)酸性硫酸塩土・深草土に消石灰を混ぜ合わせると,混合率の増加・養生日数の経過とともに強度は著しく増大し,かつ脆性的な材料の性質へと変化していく.また,強度発現速度は酸性硫酸塩土よりも深草土を処理対象土とした場合の方が高い. (2)石灰安定処理土の強度発現はエトリンガイトの形成が大きく関与している.
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