研究概要 |
土壌や地下水の汚染は,私有地あるいは私有財産と不可分の関係にある点で,顕在化している他の環境汚染とは一線を画する.土地取引に土壌地下水汚染調査が必須の時代にあって,綿密な調査と,汚染が発見されたときの適切な修復技術の選択と修復効果の評価は,水工学に期待されている現在的課題の筆頭といえる. こうした背景から本研究では,これまでに土壌地下水汚染が顕在化し修復対策の実施されてきた汚染現場のうち,トリクロロエチレンなどの揮発性有機塩素化合物,重金属類と硝酸性窒素を事例的に取り上げる.汚染現場の地質学的特徴や水循環,汚染物質の点源,面源の違いや地下水流動の規模など,修復コストに係わる諸量について整理し,共通因子を抽出するとともに,低コスト低負荷な修復のあり方と修復手順を明らかにする.さらにこの手法を研究対象にした汚染現場に模擬的に当てはめ,より効果的な修復対策のあり方を提案する. 平成19年度には,研究初年度(平成18年度)に整理した現場データおよび構築した数値シミュレーションモデルを利用して,地下水流動が修復効果に大きく影響するバイオレメディエーション技術について検討を行った.その結果,微生物分解速度に関する以下の知見を得た. 1)帯水層における自然浄化機能を利用する科学的自然減衰(MNA,Monitored Natural Attenuation)では,揮発性有機塩素化合物の一次反応速度定数がほぼ10^<-3>/dである. 2)栄養剤を帯水層に添加して微生物分解を促進させる方法では,地下水の流れを制御することで分解速度が自然条件下より100倍から1000倍程度大きくなる.
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