研究概要 |
本研究は,石工の伝統的技術としての継承、普及を図ることを主題として,石組みによる落差工、床止めの施工方法の整理と共にその力学的設計法を提示しようとするものである。本研究では,1)石組み落差工の安定性に関する構造本体に働く流体力の評価,2)石組み構造での伏流による貯留機能に関する水理機能,3)石組み構造への転石の衝突による衝撃力の評価,4)石組みの施工事例や石工の施工方法等のとりまとめについて,検討を進めてきた まず,流体力の評価に関する研究では,ステップ上に射流の出現する流れが最大外力を与える流れであることが示された。この時の流れは,段落ち下流の水深によって,もぐり流れと波状流れの二種の流れが現れるが,この区分条件を明らかにした。次に,射流の段落ち流れによる抗力,揚力を室内実験,現地実験によって調べ,理論的考察に基づいた抗力並びに実験的検討に基づいた揚力の評価式が提案され,石組み落差工の一つの設計基準案が示された。伏流による貯留機能に関する研究では,落差工の十分な裏込め土砂により一定程度の水密性が確保され,水位の時間変動の観察により出水時の流量は堰越流でほぼ評価できることが認められた。石張り河道の伏流特性については,石張り直下の流速測定により,今後さらに検討が必要である。 転石の衝突による衝撃力の研究では,衝撃力はほぼレイノルズ数に比例すること,転石は衝突物体の前面には淀み域が形成され,淀み域では流れの衝突により周囲圧より高い圧力場が形成され,転石はこの圧力場のため物体を回避することが多いことが,明らかとなった。今後,転石の回避条件を検討する必要がある。石組みの施工事例調査では,巨石による庭園配石法の滝石組みや乱れ積みによる石組みの有用性が認められ,石組み本体やプール部での安定性向上に有用であることが認められた。
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