右折ドライバが右から来る歩行者を回避する挙動(地点、速度、歩行者との位置関係)について分析した。歩行者の回避が必要あるいは不要と判断するときの時空間的なギャップを示す指標「タイムラグ」を提案した。平成18年度に実施したフィールド実験結果から、対向直進車のギャップアクセプタンスと同様、ドライバは横断歩行者の歩く速度と位置から、自車とのコンフリクトを判定していることを明らかとした。ドライバが歩行者とのコンフリクトを感じる限界は2秒であること、そのときの歩行者を認知する時間は約3秒前である結果を示した。次に、ドライバの回避挙動について詳細な分析を行った。ドライバは横断歩道の約10m手前で歩行者とのコンフリクトを認知しブレーキを踏んだ。このときの歩行者位置は衝突点の6m手前であった。ドライバからの角度は約64度であった。 タイムラグという概念は本研究から生まれた概念であり一般性があるとは言えない。また、右折車が歩行者を回避する挙動を表す指標は日本のみなら海外でも研究された前例が少ない。そこで、TRBにて様々な専門家とタイムラグがドライバが歩行者を回避するときの指標となるのかどうかを議論した。その結果、指標としての妥当性はあることが認められた。今後、調査分析を重ね、指標としての妥当性を検証し、さらに多くの研究者と議論を重ね、歩行者を回避する指標としてブラッシュアップしていく必要がある。
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