本研究は、(1)人口流動・交流人口・産業構造から捕らえた自然共生地域の類型を行うとともに、(2)当該地域を対象とした国土管理上の施策効果(質的転換効果)を把握するための人工社会モデルの構築を行うものである。 具体的には、(1)に関して、国土交通省が作成した総合交通分析システムと農業センサスデータの統合を行い、産業構造・生活施設配置・アクセシビリティなどから自然共生地域の類型を行う。(2)に関しては、産業構造・生活施設配置・アクセシビリティを政策変数に取り上げて、自然共生地域の定住・交流人口の変化を把握できるモデルを構築して、施策効果とその発現速度から施策の有効性を評価する。モデルの詳細は後述するが、「生活圏域」と「自然共生地域」の階層原理を空間的に記述できるマルチエージェントシステムを用いた人工社会モデルを考えている。 平成18年度の研究実績は以下のとおりである。 I.農業センサスデータ、個別産業・生活関連施設の集積データとNITASデータとの統合を行い、産業立地パターンと施設整備パターンから自然共生地域の衰退過程を実証分析した。:具体的な作業としては、既存の農業センサスデータをメッシュ単位に集計しなおすとともに、製造業・サービス・卸小売業のうち主要な産業立地と医療・教育・福祉などの生活関連施設整備に着目して、NITASデータ(1Kmメッシュ)に重ねる作業であった。また、本研究では、産業別立地数や生活関連施設整備数、アクセシビリティを入力データとし人口を出力とした「マルチエージェントシステム(人工社会モデルのひとつ)」を用いて、空間相互作用を考慮した自然共生地域の空間的範囲とその衰退過程を把握した。 II.自己組織化モデルの発展形である「人工社会モデル」を用いて、地域ブロックにおける自然共生地域の階層原理をモデル化した。:ここでは、1Kmメッシュで構成された地域ブロックが、個別産業集積や生活関連施設整備によって導かれる人口変容によって、時系列的に変化してゆく状況を、「地域ブロック」・「生活圏域と自然共生地域」という階層構造の中で捕らえて、地図上に再現することを行なった。なお、1Kmメッシュデータで構築したニューラル・ネットワークモデルの出力は、メッシュ単位の人口である。マルチエージェントシステムでは、各メッシュに与えられる「エージェント」と「環境」を基にして、メッシュ間の移動「ルール」により進化ゲームをさせて、生活圏域と自然共生地域の1Kmメッシュデータ単位の人口変化(空間的相互作用)を記述した。
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