研究概要 |
都市再生が国家的な重要政策課題として掲げられて以来,これまでに政策担当部局から関連学会等にいたるまで様々な場面で専門家が議論を重ねて政策が提案されている.一方で,都市基盤整備を含むほとんど全ての公共事業には客観的・定量的な評価が要求されるようになっている.特に,人口減少・高齢化社会を背景として,生産力としての人口が減少していく中での都市の生産活動の再編,高齢化に伴う世帯行動の変化と住宅立地への影響などは定量的な分析によって把握しておかなければならない. わが国では,これまでに多くの都市施策が進められながらその効果が当初の予想通りには発現されないことが多く,その大きな理由には土地取引には多くの歪みが存在していることがあげられる.地籍が確定していない,あるいは権利関係が輻輳しているためにそれらの処理に多くの追加的な費用や時間を要し,開発に伴う土地利用の転換が阻害されている.都市再生政策を迅速に推進して効果を円滑に発揮させるためにはこれらの歪みを解消するための施策が是非とも必要である. 本研究は,都市再生の諸政策を統一的に評価するための経済モデルを開発する.そして,実際に現在提案あるいは既に遂行されている人口減少下での都市政策および土地取引円滑化の政策を評価し,実務で使用できる手法として仕上げることを意図している.初年度である18年度には,以下の成果を挙げた. (1)本研究で開発するモデルに要求される性能を整理して,モデルの全体構造を設計する.各部分モデルの特徴と各部分モデル間での入出力変数を整理した.(2)近年,国内外で開発された都市モデルの動向についてサーベイを行い,本研究のモデルとの比較検討を行った.本研究のモデルに援用できるものについてはさらに詳細な検討を行い,その背後にある基礎理論についても整理を行った.(3)不完備取引の経済モデルを理論的なベースとして,土地属性や土地境界などが不確定なもとでの土地取引モデルを開発し,そのモデルにより取引費用が土地価格に反映させる構造を理論的に導出した.
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