研究概要 |
平成17年6月,熊本県は県独自の補助制度を平成19年度(一部項目は18年度)から改正し,抜本的なバス路線の見直しを促す施策を行うと発表した.1日輸送量が3人未満の系統への補助を廃止し,複数市町村系統への補助率を1/2から1/3に削減するなど,大幅な補助の縮減が図られている.このため,平成18年度以降,路線再編などの動きが活発化することが予想されている.一方で,S社は産業再生機構による支援が完了し,大手旅行会社グループの傘下に入った.平成18年4月に持ち株会社とバス事業,旅行事業,ターミナル事業の部門別3社に分割され新たなスタートを切っている.県単独補助制度の改正と合わせてS社の経営再建のための不採算路線廃止が危惧されている. 研究対象の植木町は,熊本市から山鹿市方面へ国道3号線が縦貫し,玉名方面の国道208号線,南関方面の県道3号線などに分岐する交通の要衝として発展してきた町である.九州縦貫自動車道植木IC,JR鹿児島本線の田原坂駅,植木駅を抱え,熊本市から県北への玄関口としての役割を担っている.バス路線網についても同様で,前述の幹線道路を走るバス路線など,平日ベースで全41系統290便のバスが運行している.この内,S社のグループで運行する37系統が赤字運行で補助対象路線となっていて,県補助制度改正で約750万円の町負担額増が見込まれている.このため,コミュニティバス導入を視野に入れた路線再編が計画されている. そこで,赤字バス路線への補助制度の実態や,バスの利用実態についての分析を行っていきながら,地方バス路線の再編計画案を策定し,現行補助制度の改善点にっいて検討を行った.対象地域が複数の地方小都市圏に跨っているため,地域流動に関する既存資料が十分には整備されていない.また,現行の補助制度で用いられているバス路線の利用頻度を計る指標が営業実績に基づく見かけの値を用いてあるため,バス乗降調査を実施して利用実態に即した補助指標のあり方の検討を行った.バス事業者の経営努力が反映されない現行補助制度に対して,利用実態に即した適正なバス路線の経営評価を行い,路線再編案検討や補助金の負担割合など,バスサービスの総合的な評価を行っていくにあたっての新たな指針を与えた.
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