研究概要 |
金属が複合して存在する場合の藻類に対する影響を検討した。対象藻類として、我が国の河川で一般的な珪藻のNitzschia palea(NIES-487)を用い、これを試験前に継代培養して用いた。まず、亜鉛のみを含む試験液について実験を行った。亜鉛濃度を0,30,100,200,300,400,500,1000μg/lに調整し、培養条件は,pH6、室温25℃、照度4000lxの連続照射及び一日数回の撹絆とし、試験期間は72時間とした。経時的にサンプリングを行い、Chlorophyll a濃度の変化を三波長法で測定した。その結果、初期亜鉛濃度が100μg/l以下では、Chlorophyll a濃度の変化は無添加の条件とほとんど変わらないが、200μg/l以上では亜鉛濃度の増加に伴いChlorophyll a濃度が大きく減少し、阻害作用があることが分かった。次に、亜鉛による阻害が生じない濃度である30μg/lとして、それに全アルミニウム濃度をSolutionI(単核アルミが主成分)では0,50,100,500,1000μg/l、Solution II(重合核アルミが主成分)では0,200,500,1000,2500μg/lとなるように加えたものと加えないものの双方について同様に実験を行った。その結果、全アルミニウム濃度が高い場合,重合核アルミニウム自体の阻害作用が大きく,亜鉛の共存による影響は見られなかった。しかしながら、Solution IIでは全アルミニウム濃度が500μg/l以下の低濃度において,Znを添加した方が添加しないものよりChlorophyll a濃度の減少速度が速く、亜鉛自体では阻害作用がない場合でも重合核アルミニウムが複合して存在する場合に藻類に対して阻害作用があることが分かった。このように、中性付近の条件下で水生生物の保全に関する亜鉛が基準値と同じ場合でも、アルミニウムが重合核として存在する場合に、複合的な阻害作用が生じることを明らかにした。
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