研究概要 |
本研究では,関西地域の重要な水源となっている琵琶湖・淀川水系から採取したサンプルについて,固相抽出カートリッジを組み合わせた生態毒性評価系を用いて試験を実施し,琵琶湖・淀川水系における生態毒性レベルの評価を行った。また,HPLC(高速液体クロマトグラフ)を用いて水中の化学物質のフラクション分画を行い,バイオアッセイとLC/MS/MS(高速液体クロマトグラフータンデム質量分析計)を活用してその原因物質の同定を試みた。 (1)琵琶湖・淀川水系における生態毒性レベルの評価 琵琶湖・淀川水系は,流域から多くの下水処理水や排水が流入しており,これらの水に含まれる化学物質の生態影響が懸念される。本研究では,琵琶湖・淀川水系においてサンプリングを実施し,固相抽出カートリッジを前処理に利用した生態毒性評価系を用いて試験を実施し,琵琶湖・淀川水系における生態毒性レベルの評価を行った。また,淀川河川水だけでなく,河川へと流入している下水処理水や淀川支川等についてもサンプル採取を行った。その結果,相対的に下水処理水とその放流先地点で毒性が高いことが分かった。また,下水処理水の影響を受けていない一部の淀川支川においても,毒性の高い地点が見られた。 (2)生態毒性の原因物質推定手法の検討 琵琶湖・淀川水系から採取したサンプルについて,生態毒性が観察されたものについては,その原因物質が問題となる。本研究においては,淀川水系から採取した河川水,下水処理水サンプルについて,HPLCにより化学物質のフラクション分画を行うとともに,バイオアッセイとLC/MS/MSを活用して生態毒性原因物質の同定を試みた。その結果,HPLCを用いたフラクション分画とバイオアッセイを組み合わせることによって,生態毒性原因物質のフラクション分画を行うことが可能であることが確認された。また,毒牲の比較的高かった分画についてLC/MS/MSにより原因物質の分子量を調べた結果,分子量が600程度の物質が生態毒性原因物質の1つであることが示唆された。
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