研究概要 |
膜分離活性汚泥法における目詰まり原因物質である菌体の代謝物(EPS)は膜の遮断効果により,膜面に付着し,膜透過流束低下を引きこすと考えられる.EPSは菌体との結合性が強いEPS(strongly-bound EPS)と菌体との結合性が弱いEPS(loosely-bound EPS)があり,これらは膜面堆積中に分解することが考えられる.本研究では膜面堆積汚泥よりEPSを抽出し,膜面に堆積したEPSの分子量変化とそれに伴う膜透過流束の変化について検討を行った. 実験は2回行った.活性汚泥混合液に5枚のMF平膜(公称孔径0.45マイクロメートル)を浸漬させ,実験一回目はFlux 0.4m/dayで28日間,実験二回目はFlux 0.15m/dayで6日間連続吸引を行った.空気量は10L/minとした.膜面に汚泥を堆積させた後,膜面の付着物の変化を測定するために,水道水で満たした反応槽内に膜面に汚泥が付着した5枚の膜を移し,実験一回目はFlux 0.04m/dayで,実験二回目は膜間差圧40kPa連続的に吸引を行った,膜面に汚泥の隔離を防ぐため曝気は行わなかった. EPSは時間経過に伴い,膜面に堆積した汚泥を採取し,蒸留水で希釈した後,回転数300rpmで攪拌して混合液にした状態にし,遠心分離により回転数3000Gで固液分離を行い,沈殿物には菌体との結合性が強いもの(強結合EPS),上澄みには菌体との結合性が弱いもの(弱結合EPS)が含まれていると考え,それぞれに陽イオン交換樹脂を用いて抽出を行った.抽出したEPSをゲルクロマトグラフィーにより,分子量分画を行った. 膜面における強結合および弱結合EPSにおいては、500,000Da以下の分子量をもつEPS量が増加した.また、膜面上の高分子量のEPSの減少により膜ろ過抵抗が減少することが示された。以上より、膜面におけるポリマーの低分子化が膜分離リアクターの挙動に影響を与えることが示唆された。
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