研究概要 |
本研究では,焼酎粕乾燥固形物から高付加価値きのこを生産可能な菌床を開発し、食品循環資源の再生利用を段階的に考えた、焼酎粕の環境保全型・資源循環型の新規システムを開発することを最終目的に平成18年度は高付加価値きのこを安定生産可能な栽培条件の確立を目指した。ここでは、国内生産量、消費量が急激に増加しているエリンギ(Pleurotus eryngii)を用いて甘藷焼酎粕乾燥固形物を栄養材とする焼酎粕培地で栽培試験を実施した。 その結果、1.甘藷焼酎粕乾燥固形物はエリンギ栽培において効果的な栄養材であると結論した。また、その最適添加率は、収量性、子実体の品質から判断して、60%であった。2.焼酎粕培地における最適水分率、培地詰め量は菌まわり日数、総栽培日数、収量性から総合的に判断して水分率65%、培地詰め量570gであると判断した。3.焼酎粕培地(焼酎粕添加率60%)における子実体の収量は基本培地(BL)の約1.6倍であった。また、栽培日数も5日程度短縮できることがわかった。4.エリンギ栽培における主要技術指標に本試験で得られた結果を照合すると、焼酎粕添加率40%以上で条件(一作60日,1ビンあたりの収量90〜130g)をクリアすることがわかった。5.最適栽培条件(焼酎粕添加率60%、水分率65%、培地詰め量570g)の焼酎粕培地で栽培したエリンギは基本培地で栽培したものと比べ旨味、甘味が強く、歯ごたえのある特徴を持つことが子実体の成分分析、官能評価及び電子顕微鏡の写真より明らかになった。 以上の結果から、甘藷焼酎粕乾燥固形物をきのこ栽培における栄養材として利用すると、高付加価値きのこを収量性の高い状態で生産できることがわかった。
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