研究概要 |
本研究は非線形復元力モデルの同定手法に自己学習機能を持たせた同定手法を提案し,それに耐震性能評価法に組み込み,部材の変形と応力を推定して建物の構造健全性を評価する手法の開発を行った (1)建物の自己学習型非線形振動システム同定手法 水平2方向の地震動を受ける多質点系2軸非線形振動モデルを用いて建物の2軸非線形復元力特性の同定する手法の開発を行った。そして、提案手法の有効性を調べた。その結果、提案した自己学習機能は概ね有効であることが確かめられたが、改善の余地もあることも分かった。 (2)建物の損傷度と現有耐震性能評価法と構造健全性診断法の開発 「鉄筋コンクリート造建物の耐震性能評価指針(案)・同解説」(日本建築学会編,2004年度版)の部材の損傷度及び建物の現有耐震性能の評価法を本研究のシステム同定手法に組み込み,新しい構造健全性診断法の開発を試みた。開発では、システム同定を用いた構造健全性診断は同定の精度で診断結果が大きく左右されること踏まえて、構造健全性診断結果の信頼度を確率で表す方法を提案した。この方法は同定誤差により建物の構造特性がどの程度変動するかを変動量とその起こりうる可能性を確率分布関数で表して、この確率分布で構造特性が表される建物モデルを用いて損傷評価を行い、予想される損傷の信頼性を評価する。開発した手法を用いて、地震応答記録が蓄積されている建物の構造健全性診断を行い、概ね信頼できる結果が得られることが分かった。 (3)検証用建物への地震計の設置と常時微動測定 本研究で提案する建物の構造健全性診断法の有効性を検証する建物として,東北大学構内に建設された免震実証建屋と総合研究棟を選定し、これらの建物に振動計を設置して常時微動と地震応答の連続観測を開始した。そして、観測記録から固有周期や剛性を同定し,建物の構造特性の日変動や地震時変動のモニタリングを継続的に行っている。その結果、地震前から地震時、そして地震後までの構造特性の変化が明瞭に捉えることに成功した。また、風による振動から構造特性を捉えることも可能であることが分かり、構造健全性診断に風による振動も利用できることが明らかにかった。
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