3ヵ年で実施する本研究では、土塗り壁のせん断耐力に、壁土の産地の違いが及ぼす影響を明らかにし、日本各地の土塗り壁のせん断耐力のばらつきを明らかにすることを目的としている。平成18年度においては、以下のことを行った。 1.壁土の産地および下地の構法の把握 日本全国の土塗り壁工法について把握するために、熟練した左官職人の方に対してアンケート調査を実施した。アンケート用紙は、(社)日本左官業組合連合会の各県の代表者を通じて、全国に460部配布し、209件の回答があった。 下地の工法について、間渡しに割竹を用いた場合は丸竹の場合の約1.5倍であり、小舞については、ほとんどが割竹であった。東北、北陸地方では、小舞に葦を使う場合も多くみられた。 壁土について、既調合の製品を用いた場合は、有効回答数の約半数であった。その他は、山や田畑から採取しているとのことであった。水合わせ後、荒壁塗りまでに壁土を寝かせる期間は、有効回答数の半数以上は1週間未満であり、スサが腐植するほど長く寝かせる場合は少ないことが分かった。 土塗り壁の利点は、部屋の湿気を吸うことであると考えている方は86%で最も多く、耐火性に優れていることを挙げた方は68%にとどまった。一方、土塗り壁の欠点としては、ほとんどの方が、工期が長く、そのために工費が高くなることを挙げていた。 2.土塗り壁の解析モデルの作成 剛体ばねモデルを用いた解析により、土塗り壁の破壊性状を再現できることを確認した。耐力性状も適切に再現するためには、壁土の材料強度等、各材料定数を適切に設定する必要がある。 3.荒木田土での土塗り壁試験体の製作 平成19年度に実施する加力試験のための荒木田土を用いた土塗り壁試験体を製作した。これは、土塗り壁の破壊性状を詳細に把握し、解析モデルの妥当性を検証するためのものである。
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