3力年で実施する本研究では、土塗り壁のせん断耐力に、壁土の産地の違いが及ぼす影響を明らかにし、日本各地の土塗り壁のせん断耐力のばらつきを明らかにすることを目的としている。平成19年度においては、以下のことを行った。 1.各地の壁土の材料強度・粒度分布の把握 22県から29種類の中塗り土を収集し、粒度分布、フロー値、含水比を測定した後、所定の形状に形成して、曲げ圧縮、せん断および割裂引張試験を実施した。収集した29種類の壁土の強度は、変動係数で0.35程度の幅の分布であった。また、圧縮およびせん断強度は、粒度分布とある程度の相関がみられるものの、フロー値や含水比と各強度との相関は認められなかった。さらに、圧縮とせん断強度との相関係数は0.98と非常に高く、曲げと割裂引張強度との相関係数も0.89と高い値を示した。 2.荒木田土による土塗り壁試験体の耐力性状および破壊性状の把握 前年度に製作した荒木田土の土塗り壁試験体により、静的せん断加力実験を行った。中付けおよび中塗り層の厚さが30mmで側柱の断面が105mm角の場合は、120mm角の場合の約1.3倍の最大耐力であった。中付けおよび中塗り層の厚さが50mmの場合も、側柱の断面が105mm角のほうが120mm角の約1.1倍であった。側柱の断面によって土塗り壁の負担せん断力に違いが生じており、また、柱の断面が大きいほうが、土塗り壁の負担せん断力が小さい傾向であり、予想された結果とは逆であった。 3.実験結果との比較による解析モデルの修正 解析モデルに、壁土と軸組との摩擦力も考慮し、既往の実験結果に適用すると、より精度よく、荷重-変形関係を推定できることを確認した。
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