研究課題/領域番号 |
18560546
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
加藤 史郎 豊橋技術科学大学, 工学部, 教授 (40023303)
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研究分担者 |
中澤 祥二 岐阜工業高等専門学校, 建築学科, 准教授 (70314094)
柴田 良一 豊橋技術科学大学, 工学部, 准教授 (80270263)
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キーワード | シェル空間構造 / 高寿命空間構造 / 自己修復型 / 地震リスク評価 / 座屈評価法 / 2モード型Pushover解析法 / 性能評価型設計法 / グリッド計算システム |
研究概要 |
成熟した社会においては、建築された構造物は経済的使用年限を過ぎれば一部は解体・リサイクルされ、ある一部はストックとして蓄積され補修維持されつつ社会の便に供される。得に、社会性の高い建築としての空間構造ではこの性質が強い。また地震活動の高い日本では、地震後に補修可能な、あるいは、地震により変形が生じても地震後には変形が復元される自己修復型の構造形式が望ましい。また、ストック型社会では、高寿命な建築の性能評価に当たり、地震被害額をライフサイクルコストに含めて評価し、長期間にわたる経済的評価が必要となる。本研究では、自己修復型の空間構造の原型を考案しその実現可能性を確認すること、また、自己修復型の空間構造の性能評価型設計法の研究を目的とした。 本研究では、主に3種の方向から研究を推進した。ひとつは、(1)自己修復型の空間構造として、束材で偏心接合された直交ラチスドームを考案し、その自己修復特性を、固定荷重・雪荷重、地震動に対して確認し、その実現可能性を明らかにした。強地震に対しても、主たる構造には殆ど残留変形は無く、束材の曲げエネルギーで地震エネルギーが吸収さされ、地震後にはほぼ固定荷重時の鉛直変形に修復する性能を確認し、雪荷重、地震時にも自己修復性のあることを明らかにした。一方、座屈拘束ブレース(損傷許容型)で支持される空間構造の地震時性能が高いことを多くの地震応答解析から明らかにした。また、合わせて、座屈耐力の評価法を提案した。もう一方は(2)空間構造の性能設計法に必要となる地震時応答特性を静的解析から求めるため空間構造のPushover解析法の確立に向け、地震応答性状を解析的に求め、これを基本として2モード型の性能設計法の基礎を提案した。さらに、(3)空間構造の性能を、構造体だけでなく、仕上げ材等も含めて評価するため、グリッド計算システムを構築し、これを援用したフラジリティ評価計算をシステム化し、実用的な地震リスク解析法を展開し、建築の建設費等も考慮した空間構造の性能評価法について研究を進め、空間構造の体系化に方向性を与えた。これらの成果は、研究論文として公表され、今後、ストック性の高い空間構造の建設に有効に利用されるものである。
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