研究概要 |
本年度は、特に作業者の加齢と身体機能の関係に関する調査と分析を中心に行った。結果は以下の通りである。 建設作業者1,000名を目標として、年齢と身体機能の変化に関する実測調査を行った。九州地区、四国地区の建設現場で作業中の建設業従事者1,010名のデータを収集、分析した。調査対象は、血圧、筋力(握力)、平衡機能(閉眼片足立ち時間)、腰痛の有無とした。調査結果から、加齢に伴う身体機能の変化は、血圧は、一般成人男子の傾向と大差はなく、作業の影響は認められなかった。筋力は、一般成人男子より総じて高く、高年齢層までこの傾向が認められた。平衡機能は、一般成人男子より低く、作業の影響が認められた。また、いずれも、ピーク年齢は、一般男子より高年齢層側にあり、作業により、ある程度の筋力の増強と維持が予想された。一方で、これら以外の視九聴力等の機能低下も文献調査から明らかにされており、身体機能の低下は、身体の不安定の他作業者総合のコミュニケーションを低下させることもある。これらに対する対策方法は、作業者に身体機能の低下を認識させ、自己管理を行うよう指導し、管理者は、作業者の身体機能の低下を補う仮設設備の整備や作業内容を考慮する必要があることがあきらかとなった。また、腰痛があると答えた数は、1,010人中226人であった。これらは、ほとんどが、忙しい時期に腰痛になるといったもの、休業する程ではないが腰痛があるといった業務上疾病には至らない程度のもので、慢性腰痛に該当すると思われるが、業務上疾病の定義では「負傷によらないもの」に至る可能性があるものであった。工事の種類別の作業者数に対する割合をみると、特にクロス工事、配管工事、屋根工事といった一定の姿勢を保ちながら作業を行う職種と、鉄筋工事、型枠工事などの重量物の運搬を行う職種で腰痛があると答えた者が多かった。
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