研究概要 |
昨年度の実験結果ではエネルギ吸収性能は高いが、剛性が低いため等価耐力を高くすることが出来なかった。また壁に貼ったボードが面外にふくらみ、その面外曲げによって破壊してしまい、耐力を上げられなかった。今年度は、エネルギ吸収性能と剛性を両立させることを目標に研究を進めた。 まず、壁の破壊モードについて、(1)ボードのビス回りひび割れ、(2)ボードの引張破壊、(3)ボードの剪断圧縮破壊に分類して、既往の研究と昨年の実験結果を参考に、それぞれの耐力式を確立した。なお(3)は鋼構造の充腹梁の勇断圧縮座屈の式から求めたものである。これらの耐力式が様々な条件で合うことを、小型試験体(450mm×900mm)による実験で確認した。あわせて壁のスリットを様々に変え、基準試験体、分散スリット試験体、配向スリット試験体の合計5体を載荷試験した。また構造解析汎用プログラムDIANAを用いてFEMによる構造解析を行って、スリット近辺の応力の状態を求めた。これらの結果を検討した結果、配向スリット試験体の性能が優れていたので、これを元に実大試験体を設計した。 実大試験体は基準試験体(1体)、配向ボード試験体(1体)、配向ボードから発展させた双機構ボード試験体(2体)である。昨年と同様、幅910mm、高さ2625mmの木造フレームの中にこれらの特徴あるスリットを入れた繊維補強モルタルを貼った試験体で、載荷試験を実施した。その結果、双機構ボード試験体(HW)は、耐力が16.4KN,壁倍率が4.2となった。これはスリットのない従来の面材張りのフレームの壁倍率2.5よりも格段に性能の高い値である。 今後、これら実験結果をまとめ、詳細な解析を行って、壁倍率が高い理由を探ると共に、モデル建物に本結果による制振壁を用いて限界状態設計法により構造解析を行う予定である。
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