研究概要 |
首都圏,大阪圏,名古屋圏においては,近い将来に発生が予測される東海・東南海・南海地震等の海溝型巨大地震によって生じる長周期成分に大きなパワーを持つ地震動が数分間続くことが予想されている.本研究は鋼構造超高層建築が巨大地震時に予測される長周期地震動を受けたときの限界性能を明らかにすることを目的とする. 鋼構造骨組の耐震性能は,梁部材の崩壊によって限界づけられる場合が多い.本研究では,梁部材の挙動および限界性能を明らかにするために,既存の超高層骨組に広く使用されている断面の幅厚比や端部の接合詳細を有する梁試験体を用いて,繰返し載荷実験を行った.試験体の形状は8種類,試験体数は30である.載荷履歴がエネルギー吸収能力に及ぼす影響を解明するために,同一形状の試験体に対し振幅および繰返しパターンの異なる数種類の載荷を行った. 本研究で得られた成果は次のようにまとめられる. 最大耐力が材端接合部におけるフランジの破断によって決まる梁の限界性能について 1)破断性状は次の2種類に分類される.ひとつはフランジ溶接部の幅中央より亀裂が進行し,断面積比が70〜80%に低下した後破断するタイプ(F1),他はフランジ溶接部の端部より亀裂が進行し,断面積比が90〜95%に低下した後破断するタイプ(F2)である. 2)繰返し載荷時の耐力上昇率は塑性繰返し数の増加に伴い低下するが,破断タイプF2の場合はF1の場合に比べて低下の程度が小さい. 3)単調載荷時の耐力上昇率は既往の算定法により予測することが出来る. 4)単調載荷時のエネルギー吸収能力は,単調載荷時の耐力上昇率を用いて予測することが出来る. 5)単調載荷時のエネルギー吸収能力と有効繰返し数を用いて繰返し載荷時のエネルギー吸収能力の下限値を予測する方法を導いた. 最大耐力が局部座屈によって決まる梁の限界性能について 1)単調載荷時のエネルギー吸収能力は,既往の文献の方法により予測することが出来る. 2)単調載荷時のエネルギー吸収能力と有効繰返し数を用いて繰返し載荷時のエネルギー吸収能力の下限値を予測する方法を導いた.
|