北海道・東北・北陸地方などの多雪地域に建設する建築物は、屋根雪荷重を考慮して設計する必要がある。特に、工場や体育施設などの大スパン建築物では、構造体重量を少なくして応力を低減させることが有利となる一方で、雪荷重の占める割合が増大するためその荷重評価が特に重要となる。近年の雪工学研究の発展により、地上積雪の深さや重量については観測資料に基づく統計的な算定が可能となった。しかし、屋根雪の分布は、風の吹き払い・吹きだまり効果によって著しく偏分布をすることがあり、その形状推定は必ずしも容易ではない。 本研究は、積雪寒冷地において、1 回の吹雪現象によって形成される建築物屋根雪の偏分布形状を予測するための実験的手法を検討したものである。その一つは、人工雪を用いた低温室内における降雪風洞実験である。水平屋根を有する実在建物の野外実測調査結果と実験で得られた縮尺模型の屋根雪分布とを比較した結果、実験風向や実験風速を野外条件と近似させることにより、当該風洞実験が屋根雪の分布パターンをある程度再現できることを示した。二つ目は、屋根雪の偏分布現象は、屋根面近傍の流れ場の影響を受けることから、屋根面の風圧分布特性に注目した。5 種類の屋根形状について、一般の風圧風洞実験から得られる平均風圧分布と降雪風洞実験から得られる屋根雪分布両者の増減特性とを比較した。その結果、両者に相関関係があることが分かった。この関係を利用して、屋根面の平均風圧係数に基づいて屋根雪偏分布形状を工学的に推定し得る実用的方法を提示することができた。
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