研究課題
本研究の目的は、建築の空調システム運用時に発生する不具合の検知を可能にするツールを開発することである。本研究で開発するツールの特徴は、新たなセンサ設置を必要とせず、基本的な少ないデータ項目で不具合の箇所を空調システム全体から絞り込むものであり、昨年度においては、不具合がある場合のシミュレーション結果と正常状態のシミュレーション結果の偏差を不具合項目に応じて分類・整理し、偏差の閾値によってルートを辿るツリー状のフロー図をプロトタイプツールとして完成させ、その有効性を確認した。しかしながら、閾値の設定については一般性を確保することが難しいため、今年度の研究では、まず、不具合項目ごとにその不具合の度合に応じたシミュレーション結果をエネルギー消費量や室内温度等の空間座標にあらかじめプロットしておき、実際の運転状態からの距離で不具合項目を推定する改良型のプロトタイプツールを再構築した。このツールの有効性を検証するために実験棟による検証実験と一般的な中規模事務所ビルを対象としたシミュレーションによる検証を行った。その結果、以下の知見が得られた。 1)夏季の検証実験において、室内設定温度不全(26℃→24℃)、給気ファン温度制御不全(16℃→19℃)、熱源製造冷温水温度不全(7℃→12℃)(ここで括弧内表記は、正常値→不具合値を表す)を複数回にわたって再現し、改良型プロトタイプツールを適用したところ、90%近い確率で不具合の検知が可能であることを確認した。 2)シミュレーションによる検証では、夏季、中間季、冬季に発生した不具合が改良型プロトタイプツールによって検証実験と同様にいずれも高い確率で検知できると同時に、改良型プロトタイプツールを適用しない場合と比較してエネルギー消費量の削減や室内環境制御の安定化につながることを明らかにした。以上の結果より、本研究で開発した不具合検知・診断ツールの実行可能性及び実際の空調システムへの適用性、ツールの導入効果等について基礎的な知見を蓄積したものと考える。
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