より精度の高い室内湿度変動予測を可能とするために、各種物性値の整備を中心に行った。 まず、主要な多孔質建材として、桧、タモ、米栂、ゴム、アルダーなど8種類の木口面材のステップ変動の実験を行った。それら実験値より、各種木材の平衡含湿率曲線、湿気容量等の整備を行った。今回は材料の絶乾重量の再測定を行うことで、平衡含湿率曲線等、湿気容量の修正を行い、曲線をそれぞれ数式化した。 また、試料表面湿気伝達率α'の算出実験では、これまで一定値として扱われていたα'の値が、吸放湿過程における試料の温度変化を加味した上で実験を行うことで、非線形であることを明らかにした。昨年度までに試料表面と槽内の水蒸気圧差が140.5Pa以上の範囲内での実験であったが、さらに水蒸気圧差が小さい範囲内での測定も行い、その近似曲線の数式化も行った。 以上で求めた物性値を用いて、局所非平衡理論に基づいた熱水分同時移動方程式を用いて、ステップ変動のシミュレーションプログラムの作成を行い、推定値への影響を検討した。 局所非平衡を示す材料内局所湿気伝達係数を一定値として扱いシミュレーションを行った場合、局所平衡理論よりも高い再現性を持つものの、実験値と予測値への大きな影響をもたらさなかった。また、試料表面湿気伝達率の非線形化は、かなりの高湿度域でない限り、予測値への影響は少なかった。 課題として、予測値のより正確性を高めるためには、材料内局所湿気伝達係数の非線形化も念頭に置く必要があると考えられた。
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