研究概要 |
平成20年度では,平成18年度に実施した人体各部位の対流熱伝達率などの熱的諸係数の計測を基に,頭部(頚部)を対象として被験者に対する局部気流曝露実験を実施し,人体への影響を検討した。特に平成19年度に実施した局部気流曝露において形成される不均一な熱環境が,人体の心理・生理反応に与える影響についての実験結果から,個人差によりその心理・生理反応がいくつかのグループに分類できる可能性が示唆されたことから,この点に関してより詳細な追加実験を実施した。具体的には,夏季において,温熱的中立域に滞在する被験者の頭部を対象として,中立域より低温側の温度の気流に曝露し,人体の心理・生理反応に与える影響について実験を行った。また本年度の実験では,個人差の把握および分類を目的とするため,曝露気流条件を絞り込み,被験者数を増やす方針で実施した。得られた結果を基に,局部気流曝露が全身および人体各部位に実際に作用する温熱的効果を,修正湿り作用温度及び部位修正湿り作用温度を用い定量的に評価した。人体の各部位が受ける影響を,実際の不均一な温熱要素(気温・湿度・放射温度及び気流)毎に示すことで,人体の部位毎に作用する温熱要素毎の影響度または効果度を定量的に検討した。その結果,全身が温熱的中立域にある場合,頭部を局部的な冷風に曝露しても直接曝露される部位を除く躯幹部及び四肢部の皮膚温に変化はほとんど現れず,温冷感に対する効果も無いことが確認された。これは,躯幹部位を主とする全身を温熱的中立域に置くことの重要性を示しているが,一方で全身が暑熱環境下にある場合の頭部冷却の効果はよく知られているところであり,全身の温熱条件と局所冷却の効果度に関してさらなる被験者実験による検討が課題として示唆された。
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