本研究は以下の3つの研究目的について実施したものである。結果の概要は以下の通りである。 (A) 住宅政策の分権化の実態を分析し、今後の自治体による地域居住政策の方向性を明らかにする/新たな法制度に基づいて都道府県や市町村で展開されている「住生活基本計画」と「地域住宅計画」の策定や運用実態について分析した。その結果、国と都道府県による住生活基本計画と県および市町村が策定する地域住宅計画はそれぞれ「マスタープラン」、「アクションプラン」という位置づけも考えられるが、実際にはそれらの関連性は意図されていない。住生活基本計画における数値目標は、豊かな「住生活」を目指すという視点からいえばなおデータの整備とそのチェックが必要である。また、地域住宅計画は市町村と都道府県との「共同策定」が多く、市町村の住宅政策能力形成の課題はなお大きい。 (B) 地域再生に向けた地域居住要求を明らかにするとともにその把握方法を構築する/まず、本研究ではこれまでに一般的に使われてきた個別世帯における「居住要求」と区別して、「地域居住要求」を「個別世帯の生活や居住空間のより豊かな質を確保するための地域社会や公共サービスや社会資本そして相互に守るべき社会規範などに対する要求」とし、現代社会においてそのような「地域居住要求」が高まっていることを先行研究などを通して明らかにした。本研究では7点にわたる地域居住要求の指標化を導き出している。しかし、その具体的な適用と検証は今後の課題として残ってしまった。 (C) 地域居住政策におけるNPOなどの地域居住支援活動の位置づけを明らかにする/墨田区における「墨田さわやかネット」、豊橋市におけるコミュニティとしての取り組みなどを取り上げ、地域社会に生活する人々がお互いに支えあったり、NPOの活動が根づいたりしている実態を明らかにすると共に、これらの活動と市町村など行政との連携も今後の課題である。
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