本研究の目的は、90年代以降のイギリス都市再生事業において、中心的位置を占めるシングル・リゼネレーション・バジェット(Single Regeneration Budget;SRB)及びニューディール・フォー・コミュニティズ(New Deal for Communities;NDC)について、パートナーシップに焦点を合わせながら、その論理と制度・実態を究明することである。研究成果は3つのである。 1.パートナーシップ政策の理論的基礎とされているソーシャル・キャピタル論を筆者が追求している新たな都市計画方法論、「場所と場の都市計画」における「場」の概念と比較検討し、それが相互補完的関係にあることを明らかにしたことである。 2.イギリス都市再生事業におけるパートナーシップの論理・制度・実態、評価をさまざまな文献にもとづいて、歴史的に跡づけたことである。 3.ロンドンにおける4地区のNDC事業について、コミュニティ・ビルディングという視点からケーススタディをおこない、パートナーシップの実際を明らかにしたことである。各地区において、コミュニティ・ビルディングの視点に立ち、きわめて誠実・真剣に、貧困・雇用・教育・治安等の問題の解決が目指されているが、次のような限界が見出された。(1)上からの、コミュニティ・ビルディングの試みであり、プログラムが画一化されている。(2)NDC事業終了後、どこまで、自立的・持続的にコミュニティ・ビルディング発展していけるかが、きわめて疑わしい。(3)地域単位の再生事業によって、コミュニティ再生ははたしてどこまで可能であるのか、という問題である。
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