本研究では、個人の避難行動の初期段階における避難方向選択に着目して、地下鉄駅における火災発生時の館内放送が避難行動に及ぼす影響を実験的に確かめ、その際の行動が個人の特性や空間構成およびサインシステムによってどのように異なるのかを明らかにすることを目的としている。本年度は、地下鉄駅において被験者を用いた避難行動実験を行った。具体的には、被験者に避難開始地点において、ヘッドホンを通して火災発生時における避難誘導放送を聴かせ(放送は音声データとして、被験者が背負ったノートPCに録音されている)、自らの判断で避難行動を行わせた。この際に、被験者に聴かせる放送は、伝達内容を系統的に変化させ、1.方向指示を含まない放送、2.方向指示を含む放送、3.下方向へ誘導する放送、4.危険な場所に近づく放送とした。被験者の行動(視方向、および移動軌跡)の記録と、実験後のインタビューの分析を行った結果、危険な範囲の広がりに対する認識が個人によって異なること、下方など抵抗感を抱きやすい状況ではそれを緩和する放送が有効であることが明らかとなった。
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