本研究は、平成16年に制定された景観法を運用するうえで欠かせない、景観計画の作成に向けた実践における指導の方法と、景観計画区域内における開発行為に対するデザイン審査の方法について、イギリスで活用されている方法論に注目しながら、日本独自の運用体制の構築を提言するための基礎調査を行うことを目的としている。 具体的には、イギリスのCABE(国土交通省と文化科学省に当たる省庁によって設立された政府外郭団体)が実践する方法論について次の3つの点に着目しながら基礎調査を行う。すなわち1)地方自治体の関係職員に対して景観計画を教育する方法、2)開発業者や建築家に対して開発の計画段階で景観への配慮を指導する方法、3)開発行為の形態意匠を対象としたデザイン審査の方法、である。 本年度の初頭に、日本の景観法への移行に際して自治体が取り組みはじめた景観計画策定の実態について調査し、日本都市計画学会にて研究発表を行った。その結果、景観計画区域内における開発行為のデザイン審査のための体制整備の遅れを指摘することができ、本研究の意義を確かなものとした。 続いて、上記の1)と2)について文献調査を行うと同時に、平成19年3月の現地調査にてヒアリング調査を行った。その結果、CABEによる調査研究の体制とその成果物としての刊行物にみられる組織内の知の蓄積と一般への情報提供による知識の共有化、またCABEの出張講演などによる地方自治体の関係職員に対する教育体制や、開発計画を申請する開発業者や建築家に対するデザイン指導の体制整備が行われていることが明らかとなった。 来年度の計画としては、上記の2)と3)(特に3)について)調査をすすめる。具体的には、CABEの指導を受けた地方自治体職員、開発業者、建築家に対する現地ヒアリング調査により、CABEの景観指導を受ける側の対応を明らかにし、その方法論と手法に対する評価を追究する予定である。
|