研究実績の概要 廟の地域福祉力を、イ地域福祉の拠点として廟空間が利用されている、ロ幅広い地域活動をしていると定義し、これらを実証的に検討するため、(1)台北市の道教廟データ収集、(2)具体的な廟の平面図、立面図作成、外観、内部の使われ方の写真撮影、(3)廟の利用者と管理人へのヒヤリング調査、(4)一部の廟への一日観察調査を実施した(実施日は平成18年7月13日から21日、7事例)。調査対象は台北市以外に、台中県、高雄県にも拡大し、有名廟、地方廟、小規模廟での差をも検討課題に含めた。研究の成果は熊本大学教育学部紀要2006年第55号と日本建築学会九州支部研究報告に掲載された。報告の要約は以下の通りである。有名廟は収入が多くかつ廟利用者組織がネットワーク型、地縁型ともに形成されているためイ、ロともに充実しているが、地方廟では資金力を反映してロに弱さが見られる。小規模廟では、新聞の自由閲覧など些細なサーヴィスに取り組んでいる。 この調査は台湾の研究協力者と現地(南栄技術学院)の研究支援を得たため、経費が削減できた。そこで、台湾移民の故郷にある馬祖廟(台湾の廟のルーツといわれており、中国福建省)、及び周辺地域の廟に地域福祉的な機能があるかどうかを、検討する課題を追加した。このために中国福建アモイへの調査を実施した(実施日は平成19年2月13日から20日、7事例)。研究の成果は建築学会全国大会報告としてまとめた。報告の要約は以下の通りである。福建省の廟の多くは文化大革命時に破壊された後、放置されたが、馬祖廟は台湾人グループによって再建、更に、他にも台湾人の支援で再建された廟がある。また、破壊を免れた地域廟も少数だが存在する。再建された廟は観光地化しているが、地域廟にはイ地域福祉の拠点として利用されている事例もある。しかし、廟利用者組織の地域活動への参加は確認できなかった。
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