研究概要 |
本年度は研究開始年度であるため,まず対象地域,公共施設,公共建築物を選定した.対象地域としては,本研究課題に関連する研究課題でこれまで分析を進めてきた,東京都多摩市を選定した.公共施設としては,自由来訪あるいは予約によってスペースを使用できる,いわば集会機能を持った施設を包括的に対象として選定した.これは,現在の公共施設の機能には重複が見られ,かつ今後の高齢社会においては,従来の通所型高齢者施設のように要介護・要支援高齢者だけを対象にするのではなく,多様な高齢者のQOLを維持・増進するための地域公共サービスが求められているからである.さらに公共建築物としては,包括的かつ柔軟なシナリオを検討するために,可能な限り多くの建築物を対象とした. 続いて,建築物ストック諸元データベースを整備した.以前から作業を進めてきた多摩市における建築物のデータベースを基礎として,集会機能を果たしているか果たす可能性がある全ての地域公共建築物建築物について,諸室の床面積,階高,天井高,梁下高から仕上げにいたるデータベースを作成した. また,集会機能を果たす地域公共施設の利用実態調査を行った.広く集会機能を果たす地域公共施設を対象に,利用目的,施設選択理由などを,大規模なアンケートによって調査した.この結果をもとにして,従来の施設・室名称にこだわらない利用類型の設定に向けて分析を行った. さらに,人口,道路網,地形に関するGISデータの整備を行った.公共建築物の転用可能性の指標としてのアクセシビリティを計測するためには,道路網の把握と,徒歩に関しては歩行ルートの傾斜を配慮する必要がある.また需要の把握にはアクセス可能な圏域の居住人口が必要である.そこで,国勢調査によって対象地域の人口を地区別に把握し,さらに民間の三次元地形データをもとに,道路網と地形に関するGISデータを整備した.
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