本年度は前年度収集したフランスの地方住居計画(PLH)図書の内容を分析するとともに、都市計画や社会政策分野における地方分権の進展が住宅政策に及ぼしている影響を具体的に把握するため、首都圏をはじめとするいくつかの都市圏で、地域居住政策担当部局へのインタビュー調査を実施した。また、日仏の計画図書の比較分析を行った。その結果、(1)住宅政策が国と地方のパートナーシップに基づき運営される政策領域となっているフランスでは、地方住居計画が両者の連携を担保するツールみとして機能し、同制度を通じて住宅政策の「地域空間化」が進んでいることを確認した。具体的には、(2)地方住居計画の策定を条件に、国の住宅政策財源の地方への委託がすすみ、計画図書の策定ならびに策定主体となる広域自治体(市町村間協力公設法人)の設立を促していることを見出した。フランスではまた、(3)住居計画の実効性を高めるために、策定から実施、評価にいたる各プロセスにステークホルダーが参画する枠組みが設定されていること、(4)個々の地域でデータソースの開発がすすむとともに情報共有の仕組みが構築されるようになっていること、を明らかにした。さらに、調査結果を総合し、フランスの地域住宅政策は、国と地方の協力、連携とともに、市町村間の協力、住宅政策と都市政策、社会政策との連携を軸に成り立っていることを指摘するとともに、これらを可能にしている制度設計の特徴や、政策のダイナミズム、政策理念の重要性を考察、日本への示唆を検討した。
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