本研究は、都市における公共空間(コモンズ)としての緑地の創出とそれを支える法、計画、施策、財源の新たな仕組みを考察し、環境共生都市の形成に向けた基盤の構築を目指すものである。対象地は、東京区部の都市内河川隣接地とし、明治以降の近代化の中で土地利用、土地所有の変遷を調査し、公共性の概念の変容について分析を行った。対象地を都市内河川沿いとしたのは、河川沿いの空間は、治水、利水、舟運等公共的機能が存在しており、公共性の概念の消長を分析することが可能であり、かつ、今後の都市再生において高いポテンシャルを内包しているためである。本年度は本科学研究費補助金プロジェクトの最終年に当たり、まとめを行った。 1.歴史的変遷分析に基づく、ポテンシャルマップの作成これまでの歴史的変遷に関してGISデータベースとして総合的にまとめ、土地所有、土地利用の観点から現状との関連性を整理し、公有地、緑地の量・質などの観点から環境特性の評価を行った。また、法適用、都市計画事業の実施状況、計画の有無など、まちづくりに関する各種の条件の整理を行った。 2.都市内河川沿い空間の新たな公共空間の創出に向けた計画論の検討・提案上述した評価図をべースとし、自然環境、水循環が著しく損なわれた地域における公共空間の創出、更には環境共生都市形成に向けて都市再生の計画論の検討を行った。 3.実現のための施策、法の枠組み、市民参加の在り方などの検討既存の法体系、施策のメニューの検討を行い、必要とされる新しい枠組みや、市民、行政の役割・連携についての提案を行った。 以上の項目からまとめたが、今後は異なるシナリオによる計画内容のシミュレーションを通して、提案した将来計画に対して、人口、都市再開発事業、規制緩和、環境政策など、計画条件を異にする分析により、環境共生都市の形成を実現していく方向で研究を深めていく必要がある。
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