本研究では、関東地方及び近畿地方の公共が管理運営する古民家の実態調査を行った。これらにより、文化教養教育施設だけではなく、老人ホーム、グループホーム、宅老所などの用途に転用され活用されている実態が明らかになった。中には特別養護老人ホームの付随施設として地域サテライト型ケアの役割を持たせている事例も見られた。 本研究ではさらに、古民家を利活用するための主要な制度である「指定管理者制度」に注目し、その実態を明らかにした。既往研究において転用された古民家に注目し、その運営実態ついて論じてきたので、この新しい制度を受けて行政が管理していた古民家を転用した公の施設にどのような影響があるか検証が必要である。そこで本研究では、古民家を転用した公の施設の指定管理者制度導入状況と傾向を明らかにし、導入後の運営の現状と問題を把握する事で今後の再生古民家施設活用の方向と課題を探る事を目的とした。研究対象施設は関東地方を中心とした1都8県を転用した公の施設とし、古民家転用事例269件のうち、各地方自治体に電話による問い合わせや各自治体ホームページより行政が所有する古民家転用事例と指定管理者制度導入事例を得た。このうち制度を導入した施設を対象に管理運営に対するアンケートを配布した。これらのうち既往研究によりヒアリングによって運営調査を行った事例5件中4件が制度導入をしており、内3件から指定管理者制度導入後の運営状況に関するヒアリング調査を再度行った。以上により、民間事業者による管理運営でも施設の有効活用までには至らず運営維持にとどまっているのが現状で、収益事業に対する税制面など法的環境整備が期待されるなど、指定管理者制度の運営実態が明らかとなった。
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