研究概要 |
気候風土に培われ,地域の暮らしを支えてきた民家は,農村の過疎化などにより荒廃している。環境問題からの産業廃棄物の消減,建物の長寿命化から,地域資源としての古民家再生が考えられている。過疎化,高齢化が進む地域では高齢者福祉施設として転用することが有用と考えられる。グループホームなどに限らず,現在,地域に密着した福祉を目指す小規模多機能施設が注目されている。本研究では,「富山型」を対象における古民家転用事例の現状と傾向を明らかにし,課題と可能性を考察することを目的とし,今後の多様なケアを提供する中での古民家のあり方を考える。 古民家改修型,新築型及び古民家以外を改修したものを含む「富山ケアネットワーク」にある37件の事例を調査対象とした。現在調査,電話による調査からネットワークの施設について4件の併設施設の事例を得た。合計41件を調査対象とした。施設代表者に,アンケート調査を行い24行から回答を得た。さらに古民家改修型3件,新築型3件についてヒアリング調査を行った。 以上より次のことが明らかとなった。(1)富山県において古民家を利用して開設を試みようとするが,開設時に人員,間取り,立地条件等を考慮しており適合する古民家を見つけることができない現状である。(2)農村部では,どこへ行くにも車が移動手段となり,周囲へ行くことが困難であるという事例が多く見られた。障害者,特に低年齢者を受け入れ周囲への迷惑を考慮すると,農村部では,施設周辺と問題なく運営していくことが可能であるというメリットもある。新築・改修問わず,施設開設場所は開設時に重視すべき点であると考えられる。(3)年齢・障害の有無種別を問わず受け入れる富山型においても,障害者を受け入れる余裕がなく,高齢者のみの受け入れにとどまっている,高齢者と子どもを同時に受け入れることは動線の違いから危険であると考えるため子供は受け入れないという考えもある。
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