産業廃棄物の削減、建物の長寿命化から、地域資源としての古民家再生が考えられている。過疎化、高齢化が進む地域では高齢者福祉施設として転用することが有用と考えられる。地域に密着した福祉を目指す小規模多機能施設が注目され、今後の多様なケアを提供する中での古民家のあり方を考えた。既往研究において転用された古民家に注目し、その運営実態ついて論じてきたので、指定管理者制度を受けて行政が管理していた古民家を転用した公の施設にどのような影響があるかも併せて検証の必要がある。そこで本調査において、古民家を転用した公の施設の指定管理者制度導入状況と傾向を明らかにした上で、導入後の運営の現状と問題を把握し、福祉施設への転用など今後の民家再生に際して、古民家の公共的利活用においての課題と可能性について考察した。 まず、古民家を利活用するための主要な制度である「指定管理者制度」に注目し、その実態を明らかにした。指定管理者制度導入後の運営の現状と問題を把握する事で今後の再生古民家施設活用の方向と課題を探る事を目的とした。結果として民間事業者による管理運営でも施設の有効活用までには至らず運営維持にとどまっているのが現状で、収益事業に対する税制面など法的環境整備が期待されるなど、指定管理者制度の運営実態が明らかとなった。次に「富山型」を対象における古民家転用事例の現状と傾向を明らかにし、今後の多様なケアを提供する中での古民家のあり方を考えた。古民家改修型、新築型及び古民家以外を改修したものを含む「富山ケアネットワーク」にある37件の事例を調査対象とした。結果として富山県において古民家を利用して開設を試みようとするが、開設時に人員、間取り、立地条件等を考慮しており適合する古民家を見つけることができない現状であることなど、古民家改修型・新築型のメリットとデメリットなど運営実態が明らかとなった。
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