CRE (Corporate Real Estate 企業不動産)戦略は、企業・団体が不動産の有効活用やその適正化、業務効率の向上などの観点から、戦略的に資産の保有(投資)や管理を行なおうとする経営管理活動である。この数年、わが国でも大手企業を中心にCRE戦略が注目され、調査研究も金融機関系研究機関、ビジネスコンサルタントや大手不動産会社などで行なわれるようになった。平成18年度は、民間企業によるCREコンソーシアムが設立されたほか、国においても、国土交通省が民間も交えた企業不動産の合理的な所有・利用に関する研究会(CRE研究会)を組織し、平成19年4月にその検討結果が公表されるなど、わが国のCRE戦略研究が大きく前進した年となった。 同年度に着手された本研究は、そうした動きを先取りしたものである。その特徴は、固定資産が量的に膨大で、かつ意思決定の過程が複雑であったり、大きく分社化されている巨大企業よりも、数十から数百件程度の固定資産で事業活動を行ない、意思決定の過程も比較的簡素な地方民間企業を調査対象としていることである。 初年度は、まずCREに関わる調査研究の先駆者複数にヒヤリングし、文献調査と合わせてCREの概念整理を行なった。並行して国内の地場スーパーマーケットと地方銀行に着目し、企業・店舗数、市場動向について既存資料による調査を行ない、全国展開の巨大企業と、本研究の対象である地方民間企業を分類した。その上で、地方民間企業について財務諸表が公開されているもの全てについて、その経営方針、リスク、固定資産に関わる各種指標の分析を行なった。さらに地場スーパーマーケットについては地方性が大きい北海道、北陸、九州の企業について、地方銀行については、経営再建中であったり、統合が公表されている銀行、大都市圏に本店を置く銀行以外の銀行に対して、出店・撤退の基本方針、固定資産管理の実態等についてアンケート調査を行なった。
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