研究概要 |
本研究は都市空間における立体的な建物配置を対象として,「球掃過法」という手法を新たに開発し,建物間の立体的な空隙の体積とその分布様態を把握することによって,都市空間の特性を計量的・形態的に記述するとともに,防災や景観の計画に資する基礎資料を提示することを目的としている。球掃過法とは,ある一定の直径の球が入る,または入らない領域の形態を描出する手法である。今年度は,京都市の市街地を適用事例として,建物間の立体的な空隙の体積と分布様態について分析を行った。 (1)建物配置のデータベース作成 京都市の中心市街地から,東西約850m,南北約760mの矩形に近い地域を選定し,都市計画図,住宅地図,航空写真および現地調査により,3,312棟の建物の階数と屋根形状の3次元データベースを構築した。屋根形状は,陸屋根・切妻・寄棟・片流れ・その他に分類した。 (2)狭小な空隙の体積の計量 掃過する球と建物すべてを一辺50cmの立方体に分割し,画像処理技法における図形のopeningと呼ばれる操作を3次元に拡張して解析プログラムを作成し,建物間の狭小な空隙,すなわち球が入らない領域を計量・描出した。球の直径が1.5,2.0,2.5mの3つの場合についてみると,空隙の体積率(建物全体の体積に対する空隙の体積の割合)は,それぞれ1.5,4.1,7.0%という結果が得られた。対象領域の建蔽率が55.4%であるから,仮に空隙の全量を建物上にかさ上げしたとすると,その高さはそれぞれ0.4,1.2,2.0mになり,空隙の体積は市街地形成上決して無視し得ない量となっていることが明らかになった。 (3)狭小な空隙の空間的な分布状態 狭小な空隙は,主に通りに面して建ち並ぶ伝統的な町家などの建物間に多く見られ,高さ方向についてみると,約7mまでの空隙の体積が全体の8割程度を占め,狭小な空隙は低層部に集中していることが明らかになった。
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