研究概要 |
本研究は、高齢者介護施設における入浴環境の利用実態を把握し,人権を尊重した介護浴槽及び入浴ケア環境の必要性を導き出すことが目的である。本年度は,従来型の特別養護老人ホームの入浴環境改善前後(ソフト+ハード)における利用実態を調査した。調査結果から得られた知見は,以下のとおりである。 1.ソフト面(集団処遇から個別処遇へ) ・マンツーマン入浴を導入することにより,一連の入浴行為での担当分けがなくなり,利用者1人に対して介助者の関わり人数が減少した。 ・利用者の受け渡しがなくなることにより,心身状況等の伝達行為もなくなった。 ・瞬間的な介助集中がなくなり,脱衣室や浴室での利用者の裸の待ち時間がなくなった。 ・従来型浴室においてもマンツーマン入浴の導入により,プライバシーの確保が可能となった。 2.ハード面(集団処遇型浴室から個別処遇型浴室へ) ・改修前は,一つの脱衣室から各浴室ヘアプローチする動線であったが,個別型浴室への改修により,1つの浴槽に対し1つの脱衣室といった配置になり,動線の交錯が解消された。 ・一般浴において立位が困難な利用者では,「入湯」「浴槽から出る」際の介助は介助者の腰等への身体的負担が懸念されていたものの,座位昇降浴槽の設置によりその身体的負担が緩和された。 以上のことから,「マンツーマン入浴(ソフト)+個別型浴槽(ハード)」は,従来の流れ作業的入浴と比べて人権を尊重した入浴ケア環境を創り出すことが可能であり,今後の高齢者介護施設の入浴ケア環境の整備において,有効な手段の一つになり得ると考えられる。
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