研究実施計画どおり、平成21年10月にトスカーナ最南端にあるフィオーラ川流域の4都市、ピティリアーノ、ソヴァーナ、ソラーノ、サンタ・フィオーラを調査し以下の研究成果を得た。 1.4都市の資料・文献はフィレンツェ大学建築学部都市地域研究学科図書館にて、複写で収集し、図面、航空写真を入手した上で、調査地に向かった。各都市の市役所の都市計画局を訪れ複写した19世紀初頭と現行の課税用不動産登記台帳(カタスト)の地籍図と対照させながら現状の調査を遂行することができた。 2.多様な高さと方向からの写真撮影、必要な部分の実測を行い、城砦と市壁・市門の残存状況、広場・街路による外部空間の構成、街区をつくる住居集合の特質を調査し、都市図面上に記録した。 3.4都市の構造、形態、空間を規定しているのはトゥーフォ(凝灰岩の一種)の塊が数多くの穴のあいた断崖絶壁で垂直た切り分けられた地形そのものである。この天然の要塞都市にはアルドブランディーニ家が支配したソヴァーナとサンタ・フィオーラ、オルシーニ家が支配したピティリアーノ(その後ユダヤ人が移住)とソラーノなどローマ教皇とつながりの深い政治構造が見られた。 4.この地域はローマを中心とするラツィオ州に接するため、トスカーナ州の他の地域に較べ、ローマ教皇や枢機卿の強い影響下にあり、その政治的圧力の下で独自の機能を持って城砦化された以上の4都市が特殊な地形状況の中に歴史的地域を形成させてきたことを明らかにした。
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