野外博物館における、民家を中心とした歴史的建造物展示・保存の実情を現地調査し、公開および技術保存の実態把握に努めた。今年度は北海道開拓の村、博物館明治村、長崎市グラバー園、川崎市立日本民家園(再度)を中心に調査した。この中で、技術保存云々よりも「指定管理者制度」の導入により、野外博物館の管理運営方法そのものが大きな転換点を迎えているらしいことがわかってきた(長崎グラバー園、北海道開拓の村)。野外博物館自体が体系的な技術保存が行える施設としては川崎市立日本民家園が最有力であろうことも、次第にわかってきた。 一方で、川崎市内で行った古民家を地域に活かす活動を、川崎市立日本民家園との連携で試行した。また、旧津久井郡藤野町で行っている地元まちづくり組織と連携した「里山普請プロジェクト」は土蔵の公開修理(体験学習)を通して地域の歴史的資産を実体験しようという企画で、年間で計四回延べ100名の参加を得た。小山市に於ける旧家の屋敷に関する研究活動は、日光街道沿いに残る家内制手工業的醤油工場の遺構を産業博物館的な側面で評価し、その可能性を切り開いた。さらに藤沢市で進行中の旧家長屋門移築工事における現場公開事業への協力と、工事経緯の解説パネル作成を行った。これらは、野外博物館に於ける技術保存と公開を推進していくための基礎的作業(試行)として有効であることを確認した。
|