研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、おもに近世後半における有職故実家による公家住宅研究の全体像の解明ならびに、その学史的意義の実態解明にあった。裏松固禅の代表的な研究業績である『院宮及私第図』に詳細な検討を加えた。巻三冒頭「本槐門新槐門図」に新たな写本の存在を確認し、「槐門図」との呼称で通行する同史料の重要性を指摘した。また同書巻三の「寝殿図」の由来や成立の経緯について考察し、九条家の屋敷に関する指図で、固禅が元史料をもとに作成したものである可能性が高いこと、九条良経邸との固禅の誤認には、近世九条家における強固な復古の伝統が背景にあることなどを明らかにした。さらに沢田名垂『家屋雑考』の寝殿造鳥瞰図のもとになった図2点、すなわち巻三に収められる「古図 両中門」「両中門図」についても、先の本槐門新槐門図との関連をめぐって検討を加え、両図とも固禅以前の時代に遡る図であって、固禅作成ではないこと、しかし固禅が早くに両図に注目したことが、名垂の寝殿造鳥瞰図につながったという点に、研究史上の意義が見いだせることなどを明らかにした。ほかに、『宮室図』についても詳細な検討を加え、複数の写本の分析によって、『院宮及私第図』と『宮室図』は内容的にも密接な関係にあることを突き止めるとともに、それらの書写には狩野派の奥絵師狩野養信や、伊藤仁斎の息男東涯といった広範な人物が関与していたことを明らかにし、近世住宅研究では、故実家はもとより、幅広い分野からのアプローチがあったことを解明した。また、名垂の寝殿造鳥瞰図にも間接的に関わることになった松岡辰方について、著書の一つである『都城院宮之図』が『院宮及私第図』と重複する内容をもつことを明らかにした。『院宮及私第図』を辰方が所持したことから推して、辰方は固禅の研究を次代へ継承するとともに、寝殿造の概念形成にも大きな役割を果たしたことを明らかにした。
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Chuo Koron Bijutu Shuppann
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日本建築学会計画系論文集 603
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Journal of Architecture, Planning and Environmental Engineering 603
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