研究課題
スイスを扱った本年度は、『中世後期から近世に至る掘立棟持柱構造からの展開過程に関する形態史的研究』(2001-3年度、基盤C2、代表・土本)で2001年12月に先行実施した調査地域に含まれていなかった。木造の棟持柱構造は、その建築遺構が、ドイツ、スイス、オーストリアといったアルプス以北、あるいは東ヨーロッパに遺る。他方、アルプスより南の地域では、早い時期に木造から組積造に移行したため、木造架構の遺構が少ない。しかし、この地域では、組積造へ移行するものの、小屋組に木造を遺す事例が多く、逆にすべてを組積造とする建造物はかなりの記念碑である。今回、スイスを扱う上で、まずスイス南部のグラウビュンデン地方に向かい、棟持柱構造を持つ木造を調査した。調査の結果、この地域には、棟持柱構造がほとんど遺存していないことが把握されたが、木造の伝統的な民家に関して目を見張るものがあった。その後、棟森柱構造を確認するために、バーレンベルグの屋外博物館Freilichtmuseum Ballenbergに向かい、二日間にわたって、棟持柱構造に関する詳細な調査を実施した。この野外博物館はスイス全域の古民家が移築保存されており、全体が厳密に整理され、個々にわたる詳細に解説がある。棟持柱構造を持つ民家と確認できた事例は、もっぱらスイスの北東部に遺存していた民家であった。この民家は、寄棟茅葺の巨大な屋根をすこぶる長い棟持柱が支えるといった構造であった。この構造は、南ドイツを調査した際に実見したシュバルツバルト地方の民家に類似していると仮定された。日本にもこの種の構造がまったくなかったわけではないが、民家の一類型として定着するには至っておらず、日本と中央ヨーロッパの差異が示された。以上の実地調査の他、文献調査を実施し、スイスに遺存する棟持柱構造の民家に関する実証的な蓄積を渉猟した。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
日本建築学会計画系論文集 629
ページ: 1585-1592
International Council on Monuments and Sites : l6^<th> General Assembly and International Scientific Symposium ; Quebec, Canada, September 29-October 4, 2008 1(CR-Rom)
http://soar-rd.shinshu-u.ac.jp/soar/profile.do?lng=ja&id=HmfmZVkh