本研究は、中央ヨーロッパの棟持柱構造を形態史的観点から探求した結果、日本と中央ヨーロッパとのあいだに、木造架構の原形と変容に関するたかい類似性がみとめられることをみとおした。とりわけ、本研究が調査したフィールドである、南ドイツ、スイス、オーストリア、北イタリアで、そうであった。まず、原形を、考古学的発掘遺構と岩壁線画と建築遺構から把握した。つぎに、原形をふまえて、その後の変容を、ドイツ語圏での既往研究から把握した。本研究の成果は、棟持柱構造が建築形態の生成元と位置づけることができる、という予想である。この予想は、ひろくユーラシア大陸にあてはまるものであり、今後、アジアを検証するうえでの見通しになる。本研究の最大の成果は、ユーラシア大陸へ、棟持柱構造を祖形とする観点があてはまる、という確実な予想をえたことにある。
|