研究概要 |
本研究は建築家ルドルフ・シンドラーの建築思想の特質を析出しようとするものである.シンドラーは,ウィーン造形芸術アカデミー在籍中の1912年に,彼にとって初の論考となる`Modern Architecture: A Program'を著す.これは,ヘンドリック・ベルラーへやアウグスト・エンデルらによる論考とともに,空間への意思を示した建築家による論考として最初期の例に数えられている.彼が近代建築の主題としてみいだすこととなる「空間」,シンドラーは自身の建築を"Space Architecture"と呼び,生涯にわたり,その展開を企図し,26編に及ぶ論考を著し100件を超える独立住宅を設計し,アメリカ西海岸の近代建築を先導した. 本研究では,シンドラーの建築に関する主たる全論考を対象に,各論考で検討されている主題を項目として導き,項目の位置づけとともに,項目にみる各論考の位置づけとその変容を総体的・相対的に把握を行った.そこでは,シンドラーの論考から,前近代や近代の建築に対する言説や,自身の建築や空間,さらに具体的な設計に関する方針や手法にいたる言説を抽出し,18の論文から228の言説を抽出の上,そこから264の文節・単語を主題として導き,それらを61の項目に整理し,その上で,第4から第1水準の項目を導いた.その結果,シンドラーの建築思想の主題として【時代認識】,【空間建築】,【空間構成の方針と手法】という第1水準の項目とそれを構成する第2から第4水準の項目が導いた.
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