平成18年度の研究実施計画で予定していた海外における現地調査2回については、本務の都合上1回しか実施できなかった。しかしながら、実施した1回は、わが国の幕末期におけるキリスト教の再布教を担っていたパリ外国宣教会本部における史料閲覧調査と、同市内および周辺地域における関連建造物遺構の調査であるが、特に前者において期待以上の成果を得ることができた。すなわち、その本部の古文書局には、わが国におけるキリスト教会としては現存最古の遣構である国宝・大浦天主堂の、創建時における設計図面3葉が所蔵されていることを新たに見出すことができた。これについては、現在その内容の分析・考察を進めているが、その一部については平成19年8月に開催される日本建築学会の大会で研究発表を行うべく、論文を投稿したところである。 予定していた海外調査が1回しか実施できなかったため、その経費は主として国内外の文献資料の収集に当てた。また国内での現地調査では、わが国におけるキリスト教会の歴史的遺構が最も充実している長崎県地方の教会堂建設に甚大な功績を残した大工棟梁・鉄川与助に関して、近年その実家から発見され、現在は長崎県新上五島町・鯨賓館ミュージアムに所蔵されている設計図面の遺品について、同ミュージアムの格別な配慮によって詳細な調査を行うことができた。これについても現在、分析を進めているところで、次年度にはその成果を公表していきたいと考えている。
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