研究概要 |
平成19年度においては,当初の研究実施計画で予定していた海外での現地調査は,公務の都合上,ヴェトナム国への1回しか実現できなかった。それでもわが国の幕末期におけるキリスト教の再布教に当たっての経由地において,残存する関連遺構の技術と建築様式の様態について確認することができたのは,大きな収穫であった。 平成18年度に実施した海外調査によって,パリ外国宣教会本部の古文書局において発見することができた国宝、大浦天主堂の創建時の設計図面については,3枚のうちまず平面図についての考察を行い,その概要を日本建築学会大会において発表することができた。幸いこれについては,多くの研究者から注目されると同時に,新聞、テレビなどのマスコミにおいても大々的に報道されたところである。残る立面図2枚については引き続き分析を進めており,その成果は平成20年度に発表する予定である。 また,近年,偶然に発見された明治末期から昭和戦前期にかけて長崎のキリスト教会堂建設に絶大な功績を残した鉄川与助の関連設計図面については,それを所管する長崎県新上五島町の鯨賓館ミュージアムの好意により,その全貌を調査することができ,直接キリスト教会堂に関する図面についての分析を行った結果を,日本建築学会九州支部研究報告会において成果発表することができた。 まだ当初に掲げた本研究の目的が十分に達成されたわけではないが,最終年度となる平成20年度における完結をめざしたい。
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