研究概要 |
研究の最終年度にあたり, 本年は計測システムの完成, 得られた結果の総括・公表に重点をおいて研究を展開した. TEM/STMシステムを用いた単電子伝導計測に加え, 本システムの抵抗変化型メモリー(ReRAM)研究への応用の有益性を示した. 詳細を以下に記す. (1)TEM/STMホルダー : 前年度に確認した基本性能データを基に, システムを完成させた.DA変換ボード,電圧制御ピエゾコントローラをPC制御するために, Visual Basic. NET上でのソフトウェアを作製した.PC画面上でのマウス移動により,探針の位置制御が0.1nmオーダーで可能になった. (2)TEM/STM探針作製 : 本研究における試料作製には手間がかかる.従って実験効率向上のためには1つの試料で複数箇所の伝導計測を可能にする必要がある. そのため, 楔型先端をもつPt/Ir探針の作製法を開発した.具体的には機械研磨, ペンチによる襖形形状への加工,イオンスパッタによる最終仕上げである.10時間程度で高分解能TEM観察が可能な探針を数本作製できた. (3)TEM/STMによる量子伝導計測 : ここ数年の研究によりMgOに挟まれた2〜3nmのFeナノドットが室温において単電子伝導を示すことを実験的に明らかにできた.その総括を行う目的で2件の論文公表を行った.また日本顕微鏡学会誌「顕微鏡」に解説記事を執筆した.本研究について一定の評価を得たものと考えている. (4)TEM平面実験用試料作成 : TEM用SiN基板上にデバイスを作製するプロセスを完成した. (5)単電子デバイス以外への応用 : Pr0. 7Ca0. 3MnO3を用いたReRAM用テスト試料を用いて,TEM内での抵抗スイッチ現象を確認した. 高分解能TEM観察など今後の課題はあるが,TEM/STMシステムの他分野への研究展開を期待させる結果を得ることができた.
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