研究課題/領域番号 |
18560641
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
村上 恭和 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (30281992)
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研究分担者 |
進藤 大輔 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (20154396)
赤瀬 善太郎 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (90372317)
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キーワード | 電子線ホログラフィー / 強磁性形状記憶合金 / マルテンサイト変態 / マルチフェロイック / 電子顕微鏡 / 電子回折 / ドメイン構造 / 磁区 |
研究概要 |
前年度の研究では、Ni-Fe-Ga合金や、Ni-Co-Mn-In合金など、マルテンサイト変態を示す合金系を中心に研究を行った。これらの合金では、高温相で格子変調の凍結が起こり、ナノサイズの強弾性ドメインが生成する。電子回折図形、電子顕微鏡の明視野像・暗視野像、並びにホログラフィーで得られる位相再生像の解析結果を総合的に判断した結果、これら微細なナノドメインが与える歪場が、巨視的なパターン形成に重要な役割を果たすことが分かった。更に本年度は、巨視的パターン形成に対する変態サイクルの効果や、薄膜試料のたわみを利用した外場効果など、様々な因子に関わる実験を行った。その結果、顕著なパターン形成を示すNi-Fe-Ga合金では、高温相の変調組織を応力場で操作できることが判明した他、その格子変調パターンは低温相のドメイン構造にも一定の影響を及ぼす傾向を確認した。しかしながら、高温相に形成される歪場に比べて、マルテンサイト変態に伴う格子変形は非常に大きいために、自己調整機構と呼ばれる独特な歪緩和メカニズムが重要となる。このため、高温相の変調パターンを制御したとしても、100%その組織が低温相に転写されることは難しいことも分かった。 一方、Yb-Fe-0などの酸化物では、冷却に伴い鉄イオンの電荷整列が生じる。しかし、この物質系では電荷整列は強いフラストレーションを受け、ドメインはナノサイズに留まる。電子回折図形の強度解析の結果、これらの電荷整列ドメインは強弾性ドメインとしての一面を持つことが分かった。従って、このような酸化物系においても高温相め組織を外場で制御できる可能性があり、本研究でもその兆候を確認した。これらの研究成果は、高温相の変調構造操作を利用した、低温相のドメイン構造の新しい制御方法の開拓に資する基礎研究としての意義を有する。
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